豪華客船で働いていた時、必ずと言って良いほど船が大きく揺れる場所がありました。すごく大きな船ですが、揺れる時は本当によく揺れます。すごく揺れる場所を航海している時は、当然ですが船の中で過ごさないといけません。逃げ場がありません。何をしていても気分が悪く、本当に辛いです。食事はもちろんできませんし、何か飲んでも吐いてしまい、胃は常に空っぽ。どの体勢になっていても常に気分が悪く、吐き気との共存です。客船の中には医務室があり、良く揺れる日には酔い止めの薬が大人気です。
船酔いはお客さんだけではありません。スタッフも船酔いする場合があります。私は普段、車に乗りながら携帯ゲームが出来るほど乗り物酔いしません。その私が、航海中は2回ほど辛い船酔いになりました。船酔いが独特です。。その日は本当に仕事にならないくらいで、酷い場合は休んでしまうスタッフがいる事も珍しくありません。
実は、豪華客船での鍼灸治療の大きな需要の一つに、この船酔いが入ってきます。船が大きく揺れるポイントを通る日は、お客さんの船酔い治療と同時にスタッフの治療も立て込んで入ってきます。この日は大忙しです。船酔い治療の効果は絶大で、さっきまで動く事もできなかったスタッフが、仕事をバリバリこなせるまでに回復します。この症状は、『めまい』と共通する点がかなり多くあります。今回は、『船酔い』と『めまい』を同時に考えていきます。なぜ『船酔い』『めまい』になってしまうのか。私なりの経験ですと、95%以上の人が顎の筋肉による噛み締めが原因でした。
顎関節のリハビリテーションの専門分野によると、下顎骨の上に頭蓋骨が乗っている状態が顎関節であるようです。そして、脳がどこで重力や身体にかかる圧力を受けているかというと、この下顎骨と顎関節だと言われています。平衡感覚を司っているのは内耳の耳石だと一般的には言われます。確かにその通りです。耳石が揺れると『めまい』がしたり、平衡感覚に何かの異常が出ると言われています。船酔い、めまい、乗り物酔いの治療は、この耳石と脳を、どうやって揺らさない環境にするかと言う事がとても大切です。耳の場所は、頭蓋骨にあります。なのでもちろん内耳も、頭蓋骨にあります。頭蓋骨は下顎骨の上の乗ってっかっていますので、この下顎骨の環境を上手く整える事が出来れば内耳の耳石と脳の環境に変化が起こりにくくなり、船酔い、めまい、乗り物酔いの治療が出来ると考えています。この下顎骨に付いている筋肉は、主に顎を上下、左右、前後に動かす筋肉です。顎関節に関わる動きの全ての筋肉です。ここの筋肉達を柔らかくする事で、自転車のサスペンションのような役割を果たす事ができます。例えば、強い上下の揺れが身体全体にかかったとします。この時に顎の筋肉が硬いと、下顎骨の強い揺れ感が頭蓋骨に伝わり、耳石を大きく揺らします。結果、フラフラ、フワフワしたような感覚になります。しかし、顎の筋肉が柔らかい場合だと、大きな揺れ感は下顎骨には伝わりますが、そこで衝撃を吸収してしまいます。結果、耳石が少し揺れる程度で済むと言う事です。
私はこの治療方法で、毎クルーズ最低でも7人以上の船酔いを治療してきました。そしてこの治療法は、陸にあがってからは『めまい』にも応用が効きました。座っている状態から立ち上がったり、寝てる状態から起き上がったりすると、耳石がかなり大きく揺れます。しかし、この下顎骨に付着する筋肉群を柔らかくする事で、『めまい』がかなり軽減されるようです。また、下顎骨に付く筋肉が硬くなっている場合は、ほとんどの方が肩凝りと首凝りがある事が非常に多いように感じます。首の付け根の筋肉のいくつかは、肩甲骨の間まで広く付いています。なので、肩甲骨の間もセットで凝っている場合がほとんどです。その辺りの施術ももちろん行い、トータルバランスを取っていくように施術致します。
一回で効果がある方がほとんどですが、やはり完璧に無くなる訳ではないです。続けて3回くらいは治療を受けて症状の経過を確認して頂く方のがオススメです。この辺りの鍼を使っての治療は、鍼が初心者の方にはハードルが高いかもしれませんので、鍼を使わない施術もございます。是非ご相談下さい。『めまい』は、原因の特定が非常に難しく、ほとんどの場合が薬での治療と経過観察です。それは、ストレスも大いに関係しているからだろうと思います。また、いろいろな検査をしても異常がないのに、身体は異常があるなんて腑に落ちません。それによってのストレスで更に身体が緊張し、顎関節に力が入り、さらに症状が長引く可能性もあります。非常に悪循環に陥り易いです。
『めまい』の治療はもちろんですが、身体の様々な症状によって、その治療院の考え方があります。色々な治療法の中で、当院の治療法が合う場合も大いにあります。自分に合う治療を探す事は簡単な事ではございませんが、今回のブログを通じて、少しでも当院の治療方針をご理解いただき、何かのお力添えになれたら幸いです。
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